人々が望む新しい「自由」はいつでも、時間の経過と共にいつしか束縛を生むことになるようです。
なぜなら新しいものは歴史や様式を徐々に排除してゆきますが、実はその瞬間から「モダン」と捉えられた新しい活動の歴史が始まり、やはり同じように朽ちてゆく道を辿り始めるからです。
麹屋町のスタジオPHOTO STYLEによる「写真」を通した創作活動は、写真家松村琢磨氏の常に沸き立つ新たな感情を大切にしながらも、一方では古典といわれる基本的な品質を尊重し続ける姿勢が、その不の連鎖を止めてゆくことを可能にしているように見えます。
今回封筒用にお作りしたロゴデザインは、そんなところを表現したいと考えました。
ベースとして採用した<アヴァンギャルド・ゴシック体>は、20世紀タイポグラフィ界の第一人者であり、自由と個性を何よりも大切にしたハーブ・ルバーリンによって作られたもの。
モダンデザインはバウハウス運動によって世界へと広がりましたが、主流となったその新しい闊達なデザインは逆に隣り合う書体の自由を奪う結果を招きました。
いち早くその事象に気付いて警鐘を鳴らしたのがルバーリンであり、デザインの中に感情や歴史、そして様式の復権を促した彼は、デザイナーにとってのよりよい環境整備のため、誰もが簡単に使える書体を提供し、現在私たちが自由に扱える背景を提供した人物なのです。
60年代後半にそのルバーリンがギンズバーグと手掛けた「Avant Garde」というカッコイイ雑誌があって、今回のロゴはその代表的な書体をアレンジして、古いレコードジャケット風にスクエアの中に収めました。
素材はクラフト系のナチュラルな素材を使って古き良き!的な温かみを、インクは一色にして、お仕事の信念をあらわすようにシンプルなイメージを大切にしました。
松村さんはとても気さくで、作品同様、軽薄に飾ることを嫌う方です。
今回アレンジした特別なタイポグラフィの40年の歴史が、写真を手に取った現代のお客様にどのような印象で伝わるのか、考えると楽しくもあり、緊張もしてくるのです。
僕もゴシック体好きですね。
シンプルな中にデザイン性を見出す作業は、
ホント大変な作業だし、その人のセンスがダイレクトに
反映されて、難しくもありますよねー。
ケンチクも同じですね。プロダクトデザイナー黒川雅之氏が「デザインと死」という本で、兄の黒川記章氏を含めた建築デザインの在り方について触れています。好みは分かれるかもしれませんが、イワモクさんとの話の共通項がいくつかありますよ。