2010年6月アーカイブ

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本は人並みに読むほうだと思っているのですが、
「何度も読み返す本がある」という人のことを実はあまり理解できません。

もちろんそれは主に小説やエッセイ、評論などのことですが、
絶対に捨てられない本はあっても、「もう一度あの部分が読みたい」なんてことはまずありません。

こう書いてみて、読み返さないと知っていて捨てられない本のことに思いがいきそうになりましたが、
まったく違う話になりそうなのでやめます。

そのかわり、空想に束の間のあいだふけったり
芸術性や実用性を求めているわけではないのだけれど、
パラパラとめくればもっと別の形のない物語のような感覚をおぼえるもの、
人生の長い時間で何度か開く、そんな本はいくつかあります。

そんな本の種類は写真集などのヴィジュアル性が高いもので、
ボクは詩集などは買いませんが、反芻して心が洗われたり、
いい気分転換になるもの、何がしかのアイデアを沸かせてくれるものが多いような気がします。

昨夜寝る前に久し振りに開いたYann Arthus-Bertrandの「THE EARTH FROM THE AIR 365 DAYS」。

3kgくらいある洋書なので、ベッドにうつ伏せになり、胸の下に枕を引き寄せて、
しっかりと目の前に置いて楽しんでいると、目眩く世界中の空からの美しくも愉しいが登場します。
気分は適度に高揚してきますが、見開きの左側は写真に関する英文なので眠気も程良く襲ってくるという格好のベッドサイドブック。

もちろんGoogleEarthなんて比較するまでもなく、用途としてまったく別のもの。
写真は圧倒的に生きているし、だからこそ心に直接語りかけてくる本。
iPadで手軽になったWEBの世界がいくら発展しようとも、
この手の本がもつ中身はおろか、物体としての手触りや重み、匂いなどの価値が、
失われることはないような気がします。

ここ最近は、「TRANSIT」という雑誌を何号も重ねて置いておいて、
適当に開いた頁を読みながら寝るのが幸せです。

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鶴の港と呼ばれる長崎港は、鎖国時代唯一の国際貿易港として機能した歴史をもっています。

 

坂本龍馬もこの港を出入りする外国船を見つめていたのかもしれませんが、

そののち電気が発達した私たちの時代になると、

港からすり鉢状に生活が形成されている長崎には「夜景」という副産物が生まれたのです。

 

船舶や建築に関する電気工事全般を営む長崎電気㈱さんのサインでしたので、

「船舶」「建築」「電気」「長崎」という4つのキーワードを盛り込むことにして、

素材は港を中心にした市民自慢の素晴らしい夜景に決定。

稲佐山方面から長崎港を望んで夕暮れを待ち、看板用に写真を撮影しました。

 

クライアントは工事会社ですので、本社玄関脇に設置するこのサインに、具体的に決まった商品やサービスを訴求する必要はありません。

永く掲げられることを想定して、社名が明確に認識されること、その認識に嫌悪感を抱かれないこと、工事会社のイメージ向上に繋がる上品な雰囲気をもたせることを目指したのですが、

沿道の排気ガスによる汚れが目立たないようにブラック主体で構成して、夕暮れ時から徐々に、幻想的に光ってくれればいいな、というのが狙いです。

 

先日、夜間照明の確認にお邪魔した時の写真がこれです。

内部照明によって暗闇に引き立つ写真素材として、夜景はもってこいの素材だったことを再認識したのでした。

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昨年版から学校案内とポスターのお仕事をいただいている九州医学技術専門学校さん。

 

臨床検査技師と医療秘書を育てる日本でも歴史のある専門学校で、

なんだかんだとご迷惑をおかけしながら、来年度の募集案内が完成です。

 

学生たちの入口を少し広げてみよう、臨床検査技師の仕事を知ってもらおう、という前向きな試みから、明るくわかりやすいものにする必要がありました。

 

学校の魅力や欠点はそこに通う学生たちが一番知っています。

半分冗談みたいなインタヴューやアンケートが、実はいろいろなことを教えてくれます。話しが進むと、熱い想いを語ってくれることもあります。

いわゆる「最近の若者」たち、のそういった一面を知ることができるのは本当に新鮮で楽しいことなんですよね。

 

学生のインタヴューが示すとおり、こちらの学校の一番の魅力は先生たち。

 

楽しくて明るい先生が、学生と一生懸命に肩を並べて頑張ってくれる光景は、大学に通っていた頃のボクにはまったくなかったことなので、取り返しのつかない後悔の念が押し寄せてしまうのも仕方がありません。

 

それから、少し感動したことが。

 

納品の日、汗だくになって、パンフレットの入ったダンボール10箱をひとつずつ運んでいました。

あまりの重さに左手の握力が効かなくなり途方にくれていた頃、

ひとりの男子学生が「手伝いますよ」と言うなりダンボールに手をかけてくれたのです。

想像よりも重かったようでかなり苦労していましたが、最後まで手伝ってくれたあと、そそくさと教室へ向かったのです。

自分と無関係なこの作業を、返事も求めず手伝い始めるこの学生に、痛く勉強させられました。

若くしてこういうカッコいい男がいるのです。この学校には。

 

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